研究紹介

研究詳細

臨床応用可能な分子のメス: BioKnife(バイオナイフ)の開発

 アスベスト関連悪性腫瘍である悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma: MPM)は、細胞外マトリックス分解酵素ウロキナーゼ受容体(uPAR)をほぼ100%で発現し、胸膜を這うように広汎に進展増殖します。MPMは化学療法に抵抗性かつ早期に胸腔内へ進展するため手術適応となる症例も少 なく、従って極めて予後不良となっています。私達は、その有用な治療ツールとしてuPA/uPAR依存性に正常組織を傷害することなく腫瘍を選択的に殺傷する全く新しい画期的なバイオ医薬品候補(バイオナイフ)を開発してきました。

 バイオナイフの基本骨格であるrSeVベクターは、九州大学とディナベック株式会社が独自に臨床開発を進めている高性能RNAベクターで、SeVを骨格としたバイオ医薬の人体投与は九州大学が世界で初めて実施(rSeV/dF-hFGF2、対象: 重症虚血肢)し、安全性は既に確認されています(詳細: DVC1-0101)。これまでに、既にグリオーマ(Hasegawa Y, et al. Mol Ther 2010)そしてMPM(Morodomi Y, et al. 2012)の同所性モデルにおいて、バイオナイフが極めて高い治療効果を示すことを実験的に明らかにしました。

 また、バイオナイフのゲノムRNP (ribonucleotide-)は腫瘍細胞質内で転写・複製されますが、その際に細胞側のウイルスゲノムセンサーであるRIG-I (retinoic acid-inducible gene-I)により認識され、NF-κBを活性化することによりuPAの分泌を促進することで、その抗腫瘍効果はさらに高まることが明らかにされました(Morodomi Y, et al. 2012)。



 MPMは、医療技術が進歩した現在においてさえ、前述のごとく既存3治療(手術、化学療法、放射線療法)に極めて抵抗性が高い上に致死率も高く、「診断がなされた時点で死を覚悟しなければならない難治性悪性腫瘍」です。従って、本研究により従来技術と全く異なったメカニズム(細胞融合による腫瘍細胞選択的細胞死)による新しい抗腫瘍バイオ医薬品のproof of concept(POC)が得られ、さらに将来普遍的に医療現場へ還元されるようになれば、これら超難治性悪性腫瘍に対する全く新しい第4の選択肢として集学的治療の幅が広がるため、そのインパクトは非常に大きいものと思われます。

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