研究紹介

研究詳細

高いがん細胞殺傷能力を有する高純度のナチュラルキラー細胞(Z-NK)の選択的増幅培養技術の開発およびその臨床応用

■背 景

 ナチュラルキラー細胞(以下 NK 細胞)とは、白血球成分に含まれ、高いがん細胞殺傷能力(細胞傷害活性)を持つ細胞であり、ウイルス感染細胞やがん化した細胞を攻撃し、病気を未然に防いでいます。

 NK 細胞は感染症やがんの免疫細胞療法に適した免疫細胞であると期待されてきましたが、これまでの研究では、効率の良い NK 細胞の増幅と活性化は技術的に困難でした。事実、これまで論文報告されてきたいずれの培養法でも、増幅前の NK 細胞と同程度以上の細胞傷害活性を持つ NK 細胞が 10~60%程度と十分でないため、欧米を中心に実施されてきた臨床試験における治療効果は低く、世界中の研究者がこの課題の克服に取り組んでいるのが現状です。


■内 容

そこで我々は非常に高い細胞傷害活性を有する NK 細胞を、簡便かつ 90%を越える高純度で数百倍に増幅する技術を開発し、その特性から得られた細胞をZenithal-NK (以下Z-NK)と命名致しました。具体的には、本技術で培養された NK 細胞のほぼ100%がリンパ球系細胞の活性化マーカーである CD69 を発現(培養前:5〜10%)し、かつ細胞殺傷分子であるパーフォリンおよびグランザイムの細胞内含有量が、培養前と比較して約4〜10倍へ増加します。さらに in vitroにおいてNK 細胞活性の指標として標準的に使用される K562 細胞に対し、細胞比=1:1かつ2時間という短時間で、ほぼ100%の細胞殺傷効果を再現性良く得られただけでなく、種々の腫瘍細胞に対しても高い細胞殺傷効果を得ることが可能となりました。またK562細胞を担癌したマウス癌治療モデルにおいてin vitroの結果同様、高い治療効果が得られることも確認されました。
以上の成績は、これまで報告された培養法と比較して格段に高い増幅・活性化 NK 細胞を得る技術が確立されたことを意味し、医療現場への貢献のみならず産業上の有益性が見込まれます。


■効 果

本技術を用いることで、NK 細胞の細胞傷害活性を飛躍的に高めることができることから、少ない投与回数かつ少ない細胞数で高い感染寄生体除去効果、抗腫瘍効果が得られると考えられ、幅広い疾患に対する NK 細胞を用いた効果的な免疫細胞治療の開発へとつながることが期待されます。


■今後の展開

既に臨床試験を前提としたスケールアップ培養法(細胞1億個以上)が確立できたことから、早期の医療現場への還元を目指し、2013年3月より長崎大学で固形がんに対する第Ⅰ相臨床試験をスタートしています。

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